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姫路ビーツの由来 
 
 

ロシア人捕虜の「赤かぶら」 「ビーツ」復活へ栽培 /兵庫

 
 姫路俘虜収容所紀念写真帖に残されたロシア人捕虜らの写真。買い物途中とみられる=北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター所蔵
 
 「捕虜の蒔(ま)いた、(赤)かぶらの花は三・四年ちょろちょろ咲いたが、もう消えてしもうて咲かん」−−。約110年前の日露戦争中(1904〜05年)、姫路市にロシア兵捕虜がいた。市教委によると、約2200人にも及ぶ。市川の河原でビーツとみられる「赤かぶら」を栽培したという口伝もある。この話を元に、「赤かぶらを特産品にしよう」と考えた市民らがビーツを栽培し、商品開発や普及に取り組みはじめた。【幸長由子】
 

1904年、姫路市に国内で3番目のロシア兵俘虜(ふりょ)収容所が設置された。姫路市教委によると、旧陸軍の施設だけでなく播磨国総社や姫路船場別院本徳寺(船場御坊)など10カ所が収容所となった。旧軍は捕虜を人道的に扱う国際法に基づき、外出も許可。北海道大が所蔵する当時の写真には、姫路の商店で買い物したり、川で泳ぎ、観劇するロシア兵の姿が残されている。

 ■忘れ去られていた話に光が

 冒頭の「かぶら」の逸話は、三木治子さん(故人)が当時の様子を聞き書きした「捕虜たちの赤かぶら」(1985年)にある。播州弁で語られるこの本は、捕虜たちを姫路の人々が興味津々に見つめる様子や交流を描いた。赤かぶらについては「水をやるやら、草をひくやら『あない覗(のぞ)いたら伸びる芽も伸びん』と思う程の力の入れようやった」と描かれている。

 出版から30年以上が過ぎ、忘れられていたこの本を、元姫路市助役でNPO法人姫路タウンマネージメント協会の田中達郎理事長が注目し、「世界遺産の姫路城に大勢の観光客が訪れる今こそ、赤かぶらを姫路ならではの特産品に育て上げられる」と考えた。

 田中さんらは「赤かぶら」と書かれている野菜をビーツのことだと考えた。ビーツはロシアの代表的な料理「ボルシチ」に欠かせないからだ。ビーツはかぶらに似ているが、ほうれん草と同じアカザ科。ミネラル豊富な健康食品とされる。

 昨年11月に「姫路ビーツプロジェクト」が始まり、ロシア語を勉強する女性やベトナム人の女性、退職後の人生を模索する男性などが田中さんの周りに集まった。今春から栽培を開始。6月の初収穫では予想以上の約3トンにものぼった。

 ■オリジナル料理や紙芝居でビーツを普及

 栽培と同時に進めているのが国際交流とメニュー開発。7月初旬、収穫したてのビーツを使い「収穫祭」と題した料理教室が行われた。講師は大阪府吹田市在住のロシア人料理研究家、ブヤコフ・ビクトリアさん(48)。「ロシアでは、スープは食べるもの。具がたくさんです」と説明しながら、冷たい夏用のボルシチ、お正月に食べるサラダなど4種類を作った。「子の離乳食に栄養たっぷりビーツを使いたい」という主婦や「ロシアが好き」という会社員らが参加した。

 ロシア料理以外にもちらし寿司(ずし)やそば、カップケーキなど姫路独自のビーツ料理作りにも取り組む。メンバーの会社員、濱村晴美さんは「ビーツはピンク色が鮮やか。味が強くないので、アレンジがしやすい」という。

 収穫祭では、「捕虜たちの赤かぶら」の紙芝居も披露された。明石市で家具の作図を行う山崎美紀さん(46)が作画。当時の姫路の捕虜収容所の写真を参考に、水彩絵の具と色鉛筆の淡いタッチで描いた。山崎さんは「物語には、国の戦いを超えた人々の交流が描かれる。ビーツと共に物語を知ってもらい、当時の雰囲気を感じてほしい」と期待する。

 9月末から栽培面積を拡大し、種をまく。次回収穫分を使って、ビーツをスープにした缶詰を作り、ビーツとともに販売する計画もある。「歴史や栄養学、商品開発など切り口はさまざま。ビーツが触媒となって、多種多様な人が集まり、活動できるのがこのプロジェクトのおもしろさだ」とNPO専務理事の寺前高明さん(59)。姫路の「赤かぶら」復活の物語は始まったばかりだ。

 

◇   ◇

 NPOは栽培や商品開発などに取り組むメンバー、団体を募集している。12月初旬に収穫する。問い合わせは姫路タウンマネージメント協会(079・281・7466)。


 

収穫したビーツを手にする参加者=兵庫県姫路市船津町で、幸長由子撮影

 

 
 
 
 
 
 
 
 日露戦争 ロシア人捕虜 姫路収容      
 日露戦争のロシア人捕虜    捕虜たちの赤かぶら  
姫路俘虜収容所紀念写真・その1 
姫路俘虜収容所紀念写真・その2 
 
     
 
 
 
田中達郎さんとビーツ
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田中達郎さんとビーツ
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ビーツを使ったボルシチ(真ん中上)などのロシア料理
姫路の収容所にいたロシア兵捕虜と日本兵(北海道大スラブ・ユーラシア研究センター提供)ビーツを使ったボルシチ(真ん中上)などのロシア料理
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姫路の収容所にいたロシア兵捕虜と日本兵(北海道大スラブ・ユーラシア研究センター提供)
絵はがきになった姫路捕虜収容所(左)(北海道大スラブ・ユーラシア研究センター提供)
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絵はがきになった姫路捕虜収容所(左)(北海道大スラブ・ユーラシア研究センター提供)






















 

約110年前の日露戦争中、兵庫県姫路市内にロシア兵の捕虜がいた。彼らの多くは農村出身者で、貧しい食生活を自らの工夫で改善しようと、市川の河川敷にロシア特産の赤かぶら(ビーツ)を植えた−。そんな口伝の逸話をまちおこしに活用しようと、市民グループが「姫路ビーツプロジェクト」を始めた。(木村信行)

 ビーツはホウレンソウと同じアカザ科。カブのような見た目で実は赤く、鉄分などが豊富なことから「食べる輸血」とも呼ばれる。

 ヨーロッパでは煮込み料理やサラダに使われ、ロシアの代表的料理ボルシチの赤色はビーツに由来する。近年、健康野菜として日本でも注目されるようになった。

 姫路とロシア軍捕虜の関係は、市内に住んでいた故・三木治子さんが当時の人々の暮らしを祖母から聞いてまとめた「捕虜たちの赤かぶら」(1985年出版)に記述がある。

 同書などによると、日露戦争中の1904年、市内の神社や寺に収容所が建てられ、多くのロシア兵捕虜が連れてこられた。市川の河川敷には「露人運動場」ができ、ビーツを栽培していたという。

 住民と交流もあったが翌年、戦争が終わり、捕虜たちは帰国。“赤かぶら”の花はしばらく河川敷に咲いていたという。

 この物語に注目したNPO法人「姫路タウンマネージメント協会」は昨年、姫路ビーツプロジェクトを発足。今年1月、県日本ロシア協会の協力を得てロシア料理教室を開いた。今後もビーツを使ったレシピの研究を進める。

 3月には市内の休耕田を借り、ビーツの栽培も始める予定だ。オーナー制度で市民の参加を呼び掛ける。

 同協会は「栽培から加工開発、イベントでの活用など観光にも生かし、姫路といえばビーツと言ってもらえるようブランド化したい」と意気込む。同協会TEL079・281・7466

 【姫路のロシア兵捕虜】日露戦争(1904〜05年)の際、全国29カ所に捕虜収容所ができ、約7万2千人を収容。姫路は全国で3番目の04年8月に開設され、約1年5カ月間、播磨国総社や船場本徳寺などの寺社に約2200人が暮らした。

■NPO法人「姫路タウンマネージメント協会」理事長で元姫路市助役の田中達郎さん(88)=同市香寺町犬飼=の話

 30年ほど前、三木さんの本を読み「この人間味があふれる物語はまちおこしに生かせる」とアイデアを温めていた。

 だけど、本に出てくる赤かぶらがビーツだと分かったのは昨年。認知症予防にも効果がある健康野菜と知り驚いた。姫路には全国的に知られる特産作物がないので、学校給食やレストランに普及させる工夫をしたい。

 農村部は高齢化で休耕田が増えている。都市部の住民も参加し、ビーツ栽培を通じて交流できないか。ロシアとの草の根交流もしたい。昨年、米寿を迎えたが、まだまだ夢は広がります。

■「捕虜たちの赤かぶら」(抜粋)

 日露戦争の時のことや、船場御坊(本徳寺)の敷地に仮小屋を建てて、ロシヤの捕虜がたんと来ておった。

 まだその頃、播州の人達は西洋人などあまり見たことがないし、顔中髭(ひげ)だらけの露人は怖いし憎うもあるし、それでいて珍しうてな、町の人は勿論(もちろん)、近在からひまを見て「捕虜露人見物」に行ったものや。

 あれは夏の終わり頃か、てんでばらばらのロシヤ人が、気を揃(そろ)えて草を引くやら、小石を拾うやら、百姓道具もないのにそこらの板切れなど集めて畑らしいものをこしらえはじめた。近所の者も珍らしがって集まり、番兵さんに「なんぞ植えますのか」て聞いたら、「何でもロシヤのかぶらを蒔(ま)くらしい」ていうたった。

 番兵さんは「ここの捕虜は農村出の人が多いのや。せまい所での捕虜暮らしやで、故郷の蕪(かぶら)を作るのがえらい楽しみらしいんで、子供らが面白半分に引き抜いたりせんように、気いつけとってやってな」と情がうつるのか、よう頼まれた。

 捕虜の蒔いた、かぶらの花は三、四年ちょろちょろ咲いたが、もう消えてしもうて咲かん。

 
 
 
 
 
 
 

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